3月の上高地#6


 

朝ごはんは熱々のお雑煮でした。

ずっしりしたお餅が3つも入っていました。


ポットにお湯を詰めてもらって、出発。


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さらに奥の、徳澤園というところへ。
昔は放牧地だったそうで、今はキャンプ場になっているとか。
冬は何もないから、静かでいいところらしい。




人っ子ひとり出会わず。
雪原、独り占め。
 

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1時間ほどで徳澤園に到着。
春になったらニリンソウの大群落が見られるという、明るく開けた林で、
熱い白湯をふうふうしていたら、ここっ、ここっ、もっ、と声がする。
くぐもったような、低くて、やわらかい声です。


サルだよ、と教えられて見回すと、
......いました。

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高い高い木の上の、折れそうな細い枝の先に、
ちょこんと落ち着き払って座っていました。


そして、自分が腰かけている手近の枝を折り取っては、かじっている。
そろそろと近づいても、いっこうに嫌がる気配なし。
真下まで行ってみました。


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私が下にいるあいだにも、かじった小枝を落としてきます。

直前まで野生の生き物がさわっていたものが、頭上に降ってくる。

たのしい。

 

 

 


おいしそうには見えないけれど、これがおサルのポッキー。

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私が真下をウロチョロしても、まったく動じません。
相変わらず、こっ、もっ、と静かな声で何か言っています。
やわらかなその声は、教えられるまでサルとはわかりませんでした。
動物園でおなじみの、けたたましい「キーッ」とはまったく違います。

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そういえば、山口仲美先生が擬音語擬態語の本に書いていらっしゃいました。
古典資料に現れる擬音語擬態語の研究をなさっている国語学者なのですが、
昔々の風土記には、サルの声は「ココ」と記載されている、と。
それは、食べ物を食べているときの満足そうな声なのだ、と。

室町時代に移って、ヒトに捕らえられ、見世物にされるようになってから、
「キャッキャッ」と記載される資料が増えた、と。
それは、サルが恐怖心を抱いたときの鳴き声なのである、と。
 ⇒山口仲美『犬は「びよ」と鳴いていた』(光文社新書)
 

 

サルの「ほんとうの声」が聞けて、よかったです。




ズ〜〜〜〜ム。

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「こんにちわ〜」




雪の上にはたくさんの小さな手と足の跡がありました。

おだやかな「ここっ、ももっ」の声に誘われるようにして、
林の奥のほうから、仲間が出てきました。

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木の根元の、地面が出ているところに座り込んで、
何やら食べ始めます。




サルとカメラマン。

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まっすぐカメラ目線。



野生動物が、ヒトの存在を受け入れてくれている。

怖がらずに、そばにいてくれる。

かといって、エサをねだりに来るわけでもなく、

ただ、そこにいていいよ、と受け入れてくれている。

――とてもしあわせな時間でした。

 

各地でサルによる農作物の被害が出ているのは困ったことですし、

昨夜の宿でも、イタズラされることありますよ、と聞きましたが、

野生動物とニンゲンが、この距離で静かに同じ空気を吸っていられるのは、

とても貴重なことに思えました。

 

 

ここっ。ももっ。

 

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コメント

枝の上から見下ろすその目が
なぜかウリちゃんに似ている。。。
野生のイキモノとニンゲンが
静かに時を共有する瞬間に出会えるなんて
良い旅でしたね。
ニンゲンが猿の鳴き声を正しく理解する日が
いつか来ると信じたいものです。
それを聞いたことが無いニンゲンの一人ですが。。。

  • 藏ゆ
  • 2018/04/04 10:00

静かでとても気持ちの良い時間を感じることができました。
一定の距離を置いた共存が心地よい。

おさるさんの声は「ココ」ですね。

おサルさんの声が『キーキー』じゃないこと
知りませんでした(・・)
ここ♪もも♪って言うのが何もストレスのない
普段の鳴き声なんですね(^^)
おサルさんのポッキー,上手に皮だけ食べるんだなぁ。
「こんにちは〜」のお写真,可愛いです!
カメラマンに撮られていても悠々としているおサルさん
おばさまのとても幸せな時間のお裾分け☆
ありがとうございます(^^)

  • ж∫цж
  • 2018/04/04 20:10

共存できたらいい。
共存したい。
もっと謙虚に 知恵を使って。
「サルとカメラマン」いいなぁ。
抜けるような青空 おサルさんとの出会い等々
たくさんのお土産 受け取りました。
ありがとうございます。

  • きゃろりん
  • 2018/04/05 07:51

◇藏ゆさん◇
おや、意外です。遠野のお山にサルはいませんか? 北限は下北半島のはずですから、遠野あたりもたくさんいそうな気がしますけれど。何にも脅かされないで穏やかに過ごしているときのサルの声、お聞きになれるといいですね。ほんとうに心がほどけるような時間でした。

◇lambiさん◇
上高地から戻ってから、たまたま必要があって山口先生のご本を読み返していたら、この一節に再会し、あ、ほんとにあの声は「ここ」だった!と気づいたときのうれしさよ。猿回しにせよ、鷹匠にせよ、野生動物を人間が利用することの問題を思わずにはいられません。

◇ж∫цжさん◇
この穏やかな声を奪うことの罪深さ......、「反省」すべきは、少なくともサルの側ではないな、と思いました。サルにキーキー言わせちゃいけませんね。/私のしあわせ気分を分かち合ってくださって、ありがとうございます。ほんとうによい時間でした。

◇きゃろりんさん◇
おみやげ、お気に召していただけて、私もうれしいです。このおサルさん、はじめは木の幹の陰にいてカメラマンが見えなかったのですが、カメラマンが雪を踏んで近づく音に気づくと、左手をついて体を傾けましてね。まるで「コタツに当たっておせんべ食べてたおばちゃんが玄関に誰か来たみたいだよと気づいたとき」そのもの! 可笑しくて可愛くて楽しくて、わたくし、心の中で笑い転げました。

  • ニャンタのおば
  • 2018/04/06 09:08