猫な日本語

日本語ネイティブの知らない日本語のステキな秘密♪
猫まみれです、悪しからず。

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          << 3月11日。 | main | 〜てある >>          
         
ことばが、死ぬ。
一年が、過ぎました。
P1050342.JPG

あの日から、たくさんのたいせつなものが、失われてきました。
そして、今まさに刻一刻と失われつつあるものが、あります。
ことばです。
福島のことば福島の諸方言が、失われつつあります。

生まれた土地から根こそぎにされた子どもたちが、
自分の母方言を獲得する機会を奪われつつあるのです。
子どもが母語の文法体系を身につける「言語形成期」は、ごく短いものです。
そのことばが話されていた環境に戻れない状態がこのまま続けば、
子どもたちの中で、ふるさとのことばは、急速に呼吸を弱めてしまいます。

そしてそのことは、福島の村々が、そこに息づいてきた方言の話し手を失うことを意味します。
ことばが生き続けるためには、つねに新しい血が必要です。
子どもたちが還れない村々は、その土地のことばを受け継ぐはずだった
未来の使い手を、失いつつあるのです。

道路や橋や家は、がんばればまた、作り直すことができる。
でも、ことばの死は、もとに戻すことができません。
いったん死んだことばは、二度ともとの姿でよみがえることはできないのです。

ことばを仕事とする身にとって、これは、ほんとうに、切ないことです。
さらに、自分がその死に加担していたということが、なおさら切なく、許しがたい。

私はあの日まで、東京の電力がどこで作られているか、考えたこともありませんでした。
福島の原子力発電所で作られていたことを、愚かにも知らずにいました。
これほどの結果を招くと知っていれば、使わなかったであろう電気を、使ってきました。

たとえば、トイレの温水と便座暖房。

あんなものは要らないものだった。
1年間使わずに過ごしてみて、よくわかりました。
あんなものは、要らない、なくてもちっともかまわない、贅沢品でした。
あんなもののために、電力需要を押し上げていた。
あんなもののために、おそろしい原発を動かしてきた。
あんなもののために、原発が必要だという既定路線に無自覚に乗っていた。

温かいお湯でお尻を洗うなんて、
冬の便座がほかほかしてるだなんて、
笑っちゃうほどの贅沢でした。

そんなちっぽけな節電でどうこうなるものじゃないことは、私にだってわかります。
問題の本質は、そんなところにあるんじゃないことも、わかります。
それでも、ヒステリックな笑いが止まりません。

去年の春、すこし薄暗くて、すこし肌寒いようだった東京の街。
みょうに心地よかった、あのころの東京の街。
それが、いつのまにやらまた、駅のホームには、昼間から煌々と明かりがともり、
デパートや地下街には、コートを手に持っていも汗ばむほどの暖房が入っている。
どうしようもない焦燥感にとらわれます。
ヒステリックな笑いが、喉にこみあげてきます。
原発をふたたび動かそうだなんて、冗談ですよね?


福島のことばを死に至らしめている。
ことばの喉もとを、この私の手が、東京に住む私たちの手が、絞めあげている。

とても
くやしい。
ほんとうに、くやしいです。

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| 書いておきたいこと | 08:04 | comments(4) | - |
コメント
そっかぁ。
私たちはぱっと出てさっと消える言い回しや言葉を
「それ死語でしょ」と軽く言っちゃうけど
言葉が死ぬってことはもっと重大なことなんですね。

あれ以降の夏と冬を節電で何とか乗り切れたわけですから
きっと少しの贅沢をがまんすれば
原発ぬきの生活は可能なのではと思います。
とりあえずギラギラの夜のネオンはもういいや、と
思ってるヒト、多いんじゃないかなー(^^)
| coocoo | 2012/03/12 11:42 AM |
母方言が身に付く期間は限られているのですね。
奥深い…
言葉が死んでしまうなんて。
方言って、誰もが誇って使える言葉のはず。私も
自分が生粋の大阪弁を使えるのは、少し誇らしく
思っています。

パチンコ店はぎんぎらぎん(光も空調も)ですね。
「パチンコと自販機は我慢すればいい」と言った
石原都知事の意見、私も賛成です。
| misa | 2012/03/12 2:16 PM |
はじめまして。ショッキングなタイトルに引き込まれて。
福島の方言が失われてしまうことを、ここで初めて
思い至りました。18の齢までイナカで育った者として
一つの方言が無くなるのは胸が詰まるような気持ちです。

方言でしか表せないことが、いくつもあります。
ことばをガラス瓶に詰めて冷凍保存できたら!
でも、生活が伴わないと「ことば」じゃないんですよね。。。
ほんとに切ないですね。
| es | 2012/03/12 10:35 PM |
◇coocooさん
 単語やちょっとした言い回しを○○方言辞典として記録に留めることはできますが、
 でもそれは、あくまで「標本」に過ぎない。
 その地の空気を吸ってパタパタと元気に飛び回っていた姿ではないんですよね。

 節電で何とかいけそうなのに、なぜ原発再稼動の話が出るのか、不思議です。
 きちんと呼びかければ、大方の国民は節電にやる気満々だと思うのですけれども。


◇misaさん
 外国人に日本語を教えていると、日本人の子どもが操る日本語に驚嘆します。
 幼稚園の年長さんともなれば、ほぼ完璧な日本語文法を身につけていますから。
 語彙は大人になってからも習得がつづきますが、
 文法の獲得は子どものうちに終わってしまうんです。
 母語の文法というのは、水や空気のようなもの。
 その供給を断たれた避難中の子どもたちが、哀れです。

 パチンコ・自販機についての発言と、被災地の瓦礫受け入れに関して(だけ)は、
 私もあの都知事に大賛成です。


◇esさん
 はじめまして。ようこそおいでくださいました。
 あまり人々の意識に上っていないことのように思われて、
 つい、刺激的なタイトルにしてしまいました。
 冷凍保存も標本作りも可能だとは思うのですが、
 解凍や蘇生ができない!
 指をくわえてみているしかないのが、切ないです。
 せめて自分がもっている母方言を、じっと抱きしめましょうか。 
| ニャンタのおば | 2012/03/13 8:58 AM |
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清水由美(=ニャンタのおば)猫ヌキでは例文が作れない日本語教師。いまだニャンタに恋々。ウリが来てくれてよかった、この世に酒があってよかった、と思う日々。

ウリ=2008年初冬、八幡神社の境内で泣いていた女の子。猫とは思えないほど素直で気だてのいい灰色しましま。コムスメだと思ってたらもう8歳!
 
グリコ=2010年暮れ、ご近所の家を出されてわが家の庭猫に。黒地に金サビのおばちゃん。年齢不詳。クールな顔で、甘えるったら甘える。2014年冬、再び家猫に!

ニャンタ=18年近くをともに過ごした、猫度百パーセント、女王気質全開の三毛女史。ヒトの心をわしづかみにしたまま、2008年の梅雨空に、昇天。

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