2018.10.01 Monday
パートナー
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★【日本語「パートナー」】
この広告には、以下の文章がついていました。
ああ、すみません。
ウリ腹の左側に見える文章です。
こちら。
この手の文章には、どうにもカタカナ語が多い。
「ガレリア」が何なのかも、おばさんは知りません。
でも、そこを歩くと会話がはずむ場所であるらしい。
で、そこを誰と歩くかというと、
パートナーと、ですって。
そこで、おばさんは、おお......と小さく感嘆。
そして、文頭に戻って読み直してみました。
すると――、
「わたし」は、この写真の女性でなくてもいい。
お兄さんでも、おじさんでも、文意は通る。
そして、いっしょに歩くパートナーは、
その人の夫でも妻でもいいし、
はたまた、同性の恋人でもいい。
婚姻届けを出してるとか出してないとか、
自分と相手の性がどうだとか何だとか、
いちいち言わなくっていい。
さわやか〜。
*
じつは以前、かれこれ10年ほど前になりますが、
パートナーという語について書いたことがあります。
※下記参照。
そのときは、この語が市民権を得る日は遠いと思いました。
でも、その後、ちらほらと有名人が使う例が増え、
身の回りの知人の中にも、
メールの文面などでは使う人が出てきました。
そしてついには、この夏ご近所に越してきたカップルが、
ピンポ〜ンと、ごあいさつに見えて、
「〇〇と申します。こちら、パートナーの××です」と
自己紹介なさいました。
生身の人間の口からこの語を聞いたのは、それが初めて。
夫婦別姓をさらりと使いこなし、
生活の相棒を「パートナー」と呼ぶ。
おお、ついにここまで来たか、と感激しました。
そしてこのたびは、老舗百貨店の広告に!
とはいえ、全面的に気に入っているわけではなくて、
自分で使うのは、私には今も無理。
いささか、くすぐったいのです。
私は今後も「夫/オット氏/オットット」あたりで
お茶を濁しつつ生涯を終えることになりそうです。
でも、うん、いいぞ、「パートナー」。
がんばれ、「パートナー」!
**
以下は、拙著『辞書のすきま すきまの言葉』(2009年、研究社)の「ツレの名前」から一部転載するものです(赤字は引用者による)。これを書いたときからもう10年近くたってるんだなあ。「パートナー」、がんばったよね。
配偶者を何と呼ぶか。名前を呼ぼうが、「小鳩ちゃん」でも「子リスちゃん」でも、はたまた「オイ!」でも、当事者間では好きにしていただいてけっこうなのですが、問題は三人称の場合である。ヨソの人と話すときに、自分や相手の配偶者を何と呼ぶべきか。
英語ならmy wife/husbandですむ。文脈があれば、あっさりshe/heで何の不都合もない。しかし日本語ではそうはいきません。たとえば日本語の「彼女/彼」という語は、実はshe/heと同じではない。Sheは「三人称で単数で女性」ということしか表さない、いわば無色透明の記号だから、自分の妻にも恩師にも見ず知らずの女性にも使えるけれど、日本語の「彼女」は違うでしょう?
無色透明の人称代名詞というものを持たない日本語にあって、このことは大問題なのである。何と呼ぶかによって、当該の人物と話し手の関係、話し手と聞き手の関係、および話し手がそれらの関係をどう認識しているか、までが覆いようもなく表現されることになってしまうのだから。
自分の男性配偶者の場合だけを見ても、選択肢は山のようにある。夫、主人、パパ、お父さん、うちの人、うちの、だんな、亭主、ヤドロク、…。孫がいれば、わが夫をおじいさんだの「じいじ」だのと呼ぶのも珍しいことではない。人さまの男性配偶者を呼ぶのも大変。ご主人、だんなさん、○○ちゃんのお父さん、…。
しゃれたところでは、パートナーというのがある。これは夫にも妻にも、自分のにも人のにも使えてなかなか具合がよろしい。なんだか運命共同体の共同経営者みたいで、なかなかいいセン行ってるとも思う。が、いかんせん現状では先鋭的すぎて、ニュートラルな使用はしづらい。たとえば異性婚ではないとか、事実婚であるとか、何らかの形で「フツーじゃない」ことを言外に匂わせているような印象がつきまとってしまう。さまででなくとも、「私たち、対等なんです」と吹聴しているようで、ちょっと気恥ずかしい。
「主人/ご主人」に対する不評はだいぶ前からあって、ひところは妻の隷属性を表す語であるとか言って排斥されていたように思うのであるが、ここへ来て、むしろ若い人たち、バリバリ仕事もして自立した女性、友だち夫婦を名乗るような人々までが、何のこだわりもなさそうに使っているのを耳にする。リバイバルしたんでしょうか。夫婦別姓の動きも後退気味に感じられるし、これも保守反動の一環?
でもごく大きな流れとしては、(ご)主人はやはりすたれていく方向にあるのではなかろうか、と思います。ただこれに替わるいい呼び名が、なかなか見つからない。自分の夫は「夫」でいいとして、他人の夫が問題である。「夫さん」ではオットセイみたいだし、男女共用の「ツレ」も、身内のときはいいとして、人さまのは「お連れ合い」となる。なるのはいいが、なぜかこれ、「連れ合いに先立たれ」という決まり文句に頻用されてるのが哀しい。かといってオツレサンでは、飲み屋の相客みたい。はてさて。(以下略)
ふむ。私は「最旬」でひっかかってしまいました。なんだか中国語を読んで「いみ、わかった〜」と思う気持ちに似ていました。
「パートナー」これは「こんどの某国の大統領には奥様でなくカノジョがいるんだ!それでいいんだ!」という驚きあたりから市民権を得た言葉のように思いますがいかがでしょう。個人的には「愛情」よりも「信頼」を想像する言葉で、なんか、アタシもほしいな、パートナー、とか思ってしまいますね〜。(お互いの幸せのため、買い物は夫とはあまり一緒にしないもので……)。同棲相手とか、異性とは限らないカノジョ、カレシ、少なくとも今大切な人、etc,自由な言葉なんですね。ニャンタのおばさまの着眼点楽しいです〜。