映画鑑賞感想文

 

 

 

ウリや、

ただいま〜。

 

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振り向いてもくれない.....。

 

 

というのはウソで、

今回は玄関まで飛んできて、

その場でコロコロスリスリ、

熱烈大歓迎してくれました。

 

 

1泊、2泊じゃだめなんですね。

4日も家を空けると、

ようよう、おばが恋しくなるらしい。

 

 

 

 

今回の旅は、

映画『鳥の道を越えて』(⇒☆)を

観るためでした。

(そのついでの、乗り鉄&帰省でした。)

 

 

 

映画のテーマは「カスミ網猟」です。

山の尾根の低くなったところに、

ごくごく細い糸で編んだ網を張り、

北の国からはるばる渡ってくる小鳥を

文字通り、一網打尽に捕らえる猟です。

 

 

その上映会が木曽福島で開かれたのです。

前から気になっていた映画でした。

 

 

**

 

 

じつは、私もカスミ網の経験があります。

保護に必要なデータを取るためです。

体長・体重をはかり、雌雄の別や年齢を記録し、

最後に足環をつけて放すのです。

 

 

環境省の事業でしたが、ツテをたどって

体験させてもらいました。

 

 

アトリ、シロハラ、アオジ、ツグミ、......

やわらかな羽毛に包まれた小さな体は、

びっくりするほど熱くて、

心臓は早鐘を打つようでした。

そして、かなしいほどに、軽い。

 

こんな小さな、頼りないものが

初冬の荒海を越えてきたのかと思うと、

愛おしくて、愛おしくて、

作業をしながら、泣けそうでした。

 

 

そうして、

私の手の中の小鳥の目は、

怯えきっていました。

 

 

だから、カスミ網猟は、

私の中では絶対悪でした。

 

 

***

 

 

その一方、私は民俗も大好きなのです。

大昔ではなく、現代と地続きの、

ちょっと昔、のお話が大好き。

 

 

日本列島各地の山人の話など、

夢中になって読みふけったものです。

 

 

その意味では、カスミ網猟も、

私の中では「アリ」なのでした。

 

 

だから、この映画、

どうせなら「現場」で観よう、

と思い立った次第です。

 

 

映画の主な舞台は岐阜県東濃ですが、

木曽もまた、

カスミ網猟が盛んな土地でしたから。

 

 

****

 

 

現場で観る、という目論見は大正解でした。

会場には、

現に猟をしたことのある方たちがいました。

その手で網を張り、小鳥の首をひねり、

食べて、味を知っている人たちがいました。

 

 

上映後のトークでは、

猟の季節がどんなに待ち遠しかったか、

オトリや網にどんな工夫をしたか、

さらには、戦後法律で禁止されてからも

どうやって密猟に励んだか、

そういったことを、地元ならではの気安さで、

生き生きと発言していらっしゃいました。

 

 

これが東京などのアウェーでの上映だったら、

「悪びれもせず」そんなことは話せなかったはず。

 

 

私は会場のすみで、

ドキドキしながら聞いていました。

来てよかった、と思いました。

生きた民族譚が聞けたのです。

文句なしに、たのしい時間でした。

 

 

*****

 

 

その上で、言います。

やっぱりカスミ網猟は消えるべき猟です。

 

 

鳥たちの数が激減した最大の原因は、

カスミ網ではなく、農薬や乱開発かもしれない。

「適正な数」を獲るのであれば、

海のイワシ漁と何ら変わるところはないのかもしれません。

 

 

でも絶対に許せないと思った点があります。

カスミ網猟では、オトリを使うのです。

捕らえた鳥を何段にも重ねた籠に閉じ込め、

季節感を狂わせ、足を縛り、脅して、鳴かせる。

オトリの扱い方は、虐待そのものです。

それだけでも、許されない猟法だと思うのです。

 

 

あとは、感情論になってしまいますけれど、

網にかかった小鳥たちが、

点々と宙に浮いている光景が、

いとわしくて、おぞましくて......

それはまさに「奇妙な果実」です。

 

 

バンディングのときに見た、

怯えきったきれいな瞳を思い出すのです。

命がけで渡ってきた日本の山で、

見えない網に捕らえられ、

怯えきっていた、きれいな目。

 

 

******

 

 

猟の工夫、調理・保存のための方法を、

「文化」であると言う人もいました。

でも、スペインの闘牛も、

イギリスのキツネ狩りも、

そして、日本の鷹匠も、捕鯨も、

「文化だから」という言説に

逃げ込んではならないと思います。

 

 

それは、必要か。

ニンゲンたちが生きるために、本当に必要か。

動物たちにそれほどの苦痛を与えてまで

行うべき必要があるのか。

 

 

正面から考えるべきだと思いました。

 

 

*******

 

 

今は、豚コレラのニュースを見るのがつらい。

で、ちょっとずつベジタリアンに移行中です。

まだ「なんちゃってベジタリアン」ですけれど、

私がこの肉を食べていいのかな、と

考えることが増えました。

 

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生きるために食べるのはいい。

でも、苦しめる権利はないよね。

 

 

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コメント

ああ、もう、記事の文字を追うだけで目の前がびしょびしょになって、
昨今ほんとうにだめです……。
おばさまの勇気に頭を垂れ、知識のお裾分けに感謝するのみです。

肉類を食さなくなって十余年になりますが、昨今は食べない、
というより食べられないという感覚です(魚介をいただくので
ベジタリアンではありませぬ)。
豚肉にしても鶏肉にしても、なにか事件があるたびに、
この食品の【大量生産】に無理があるのだと感じて、
半ベジにでも拘泥せねば、
平気な顔してニンゲンをやってられない気がする……。

一度、農家が鳥除けにかけてあった釣り糸に引っかかってしまったムクドリを助けたことがあります。幸運なことに、道路側でした。素手ではつつかれそうなので、車にあったタオルを頭に被せ、あとを外そうとしましたが、どうなっているのやら?
仕方なく糸を切ってしまいました、ムクドリは躊躇なくすっ飛んで行き、空に消えていきました。農家の方には後で糸を切ってしまったことは謝りました。
なんか、とっても切なかった。道路側だから助けてしまったけど、それでよかったのか? 畑の真ん中だったら、私はどうしただろう? 農家はさくもつをまもらなきゃいけないし。

お肉を食べる、食べないと言うのも、一概に善し悪しは言えないことだと思うし。難しいな。

  • クラ・ら
  • 2019/02/22 12:05

日本人が断固守るべき食文化があるとすれば、
米と味噌と醤油、これで十分じゃないかなと思います。

  • 藏ゆ
  • 2019/02/22 13:16

生きるということは ほかの命をもらって成り立ってる。
おばさまの「それは、必要か。
      ニンゲンたちが生きるために、本当に必要か。
      動物たちにそれほどの苦痛を与えてまで
      行うべき必要があるのか。」を自分の頭で考えなくては。
食べ物を無駄にしない。
それが命だということを忘れない。
映画「WATARIDORI}を観た時のように 私もびしょ濡れ。

  • きゃろりん
  • 2019/02/23 08:07

かすみ網…オトリの猟の様子を想像したり
経験したかたたちの,猟の時季が待ち遠しい,
禁止されても密漁に励む…すごく臨場感があって
怖いです。
でも部位によって分けられて,カットされて,
パックされているお肉を食べる自分と一緒なんだなぁ
って思います(・・;)

  • ж∫цж
  • 2019/02/23 16:02

◆みなさま◆
まとめてのお返事をお許しください。まだ消化不良というか、何というか....../ちゃんと自分で網を張って、かかった獲物をちゃんと自分の手で殺して、羽をむしって、おいしく食べる。血の臭いもせぬショーケースからパックされたお肉を買ってくるだけの私より、よほど「責任ある」食べ手だと思います。そんな経験をもつ人々のいる会場でこの映画を観ることができたのは、ほんとうによかった、と思っています。/ただ、オトリのことだけは、心が受け付けませんでした。数年前に鷹匠が鷹を「しこむ」話を聞いたときも、嫌悪に近い感情を抱きました。オトリや鷹に強いられる日々は、拷問にひとしいと感じたからです。/都会に住む者のヒステリックな感情論で、地域に根差した文化を否定してはならないと思っています。でも、文化とか伝統ということばの前で考えることを停止することもまた、してはならないことだと思っています。/イワシならよくて小鳥はだめなのか。自分の手で殺せるかどうかを、今は考え方のひとつの基準にしてみようかと思っています。そういいながら、つい先日の会食ではソーセージをおいしく食べました。豚なんか、とうてい自分で殺せないくせに。ウロウロ迷いながら、少しずつでも「まっとうな方向」に進んでいけたらいいな、と思います。/コメントをありがとうございました。(藏ゆさん、豆腐と納豆も、残しといてくださいな。)

  • ニャンタのおば
  • 2019/02/23 19:30

ええと、お漬物も。

荒川弘さんの銀の匙とかを読んだ時など、色々思う事あります。これ以上は上手くコメント出来ませんわ。

  • ねんねこ商会
  • 2019/02/24 11:41


◇ねんねこ商会さん◇
あ、漬物、だいじ。/そうそうそう、農業を学ぶ若い人たちの心象は、参考になりますね。内澤旬子さんの屠畜をめぐる著作、そして漫画『BEASTARS』などでも、「肉を食う」ということについて、いろいろ考えさせられました。

  • ニャンタのおば
  • 2019/02/25 13:00

レゴシくん、、、。

  • ねんねこ商会
  • 2019/02/26 18:30


◇ねんねこ商会さん◇
ついに食っちゃいましたね.....。

  • ニャンタのおば
  • 2019/02/27 12:36

かすみ網猟、日本昔ばなしに出てくるあれですね。
まだあるのですか?無知ですみません。
おばさまのお話しの、怯える小鳥の瞳を思い浮かべてしまい、心穏やかではいられなくなりました。

今は豚コレラも、鳥インフルも、口蹄疫も、考えたくない光景が多く、それに携わる機関の人々の心も問題になりましたね。
人間はなんて惨いのでしょう。そうして動物の命をいただいているのですね。
わたしなんぞも、自分ではできないから、スーパーでラップされているものを買い調理です。
最近は私も、なんちゃってベジタリアンになりつつあり、見て見ぬふりの体でもあります。

花や木の折らないで、切らないで、むしらないで、と言う声が聞こえたら・・・なんて、世の中耳を塞がないと生活できなくなりますね。



  • スカイ ベル
  • 2019/03/02 16:05


◇スカイ ベルさん◇
日本昔ばなしに出てくるのですか? それは存じませんでした。カスミ網は、さほど古い猟法ではないと聞いております。網に木綿や絹の糸が使えるようになってからのことですし、さらに一気に「漁獲高」が上がったのは化学繊維が登場してからの話だそうですから。/「考えたくない光景が多く、それに携わる機関の人々の心も問題になりました」、これも存じませんでした。ニュースでチラリと見ただけで動転してしまうようなあの「処理」の光景、実際に手を下す立場に立たされた人たちの心が何事もなくて済むとは思えません。あの方々にも事後のケアが必要ですよね。/以前、イギリス映画で、「生きたニンジンを土から引っこ抜くなんて!」と叫んで、自然に落ちた木の実しか食べないという女性が、周りを当惑させるシーンがありました。私は自分の手でニンジンを殺せる自信があるので、ニンジンは食べられます! 冗談抜きで、「ちゃんと食べる」って、結局そういうことだろうと思います。

  • ニャンタのおば
  • 2019/03/04 08:40

かすみ網猟、さほど古いものではないとのこと、以前、日本昔ばなしで見たような気がしてそう書いたのですが、時代考証など私の勘違いなのかもととても不安になりました。自分でいろいろな画が出てきて、そう作り出して観た気になっていたのかもと。
日本昔ばなしと言えば、市原悦子さんと常田さん。残念ながらお二人とも故人となりましたが、好きでした。
豚コレラのニュースは本当に気が塞ぐようです。

木や植物の声が聞こえたらと言いながら、同時にマンドリルの画が頭に浮かびました。
私も、肉も野菜も心して戴くように致します。

  • スカイ ベル
  • 2019/03/08 18:36


◇スカイ ベルさん◇
少なくとも生息数に影響を及ぼすほど大量に捕獲されるようになったのは、化学繊維の網が出回るようになってからでしょう。/ほんに、野菜の悲鳴が聞こえない「鈍感な」生物でよかったです.....。

  • ニャンタのおば
  • 2019/03/11 11:11