どこ行くの〜?

★日本語【ノダ文】




灰色しましまのウリ猫と、
お宝の麻ぬのを並べて悦に入っていたら――、



あ。

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黒っぽい姐さんが、通りかかったんですな。



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グリコの動きに合わせて、ウリの体が斜める。



おばの目には見えましたよ。
ウリ猫の頭上に、ぽっかり浮かんだ吹き出しが。





どこへ いくんですか?

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あいかわらずの不仲だけれど、
実力行使の衝突はなくなって、
それなりに平和な日々です。
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***

ノダ文の解説】
 そんなの聞いたことない、と、たいていの日本語母語話者はおっしゃるはず。
 ネイティブは、まったく無意識に使いこなしている文型です。
 
 しかしこの「ノダ文」、日本語教師にとっては、じつに手ごわい相手です。
 たとえばつぎの、△、ノダ文です。
 (ノダのノは、しばしばンと発音されます。)

   々イだ。
   好きなんだ

 この違いをどう説明しましょうか。

 ともすれば、「強調」などという便利なことばで逃げを打つのですが、
 私が学習者だったら、それでは納得できないなあ。
 バカボンのパパの「これでいいのだ。」は、強調と言えるかもしれない。
 でも、上の´△蓮△匹Δ任靴腓Α
 「好きだ」と「大好きだ」と「好きなんだ」と「大好きなんだ」を
 並べたら、どれが何をどう強調してることになるのかな?と思ってしまう。

* 
 
 わたくしは、以下のように考えます。

 たとえば愛の告白シーンを想定した場合、
 まず、第一声は、,いいような気がします。
 「す、す、す、好きだっ。」

 で、その勢いにひるんだ相手に、おっかぶせるように言うとしたら、
 第二弾のセリフは、△砲覆襪世蹐Δ福△隼廚い泙后
 「す、す、す、好きなんだっ。」

 △砲蓮◆屬世ら、こうして勇を鼓して告白している」という、
 コトの経緯、ここにいたる心理や事情、を説明している気配がある。
 ――と、思いませんか?


 これ、じつは小説の書き出しにもとても多いパターンです。
 冒頭の1文に、多少とも読者の意表を突く文を持ってきて、
 第2文の「ノダ文」で、その種明かしや事情説明をするパターンです。

 たとえば、井伏鱒二の『山椒魚』。
 山椒魚は悲しんだ。
 彼は彼の棲家である岩屋から......外に出ることができなかつたのである



 いきなり名作文学に話を飛ばしてしまいましたが、
 きょうの本文中のウリのセリフも、根っこは同じです。
 黒っぽい姐さんグリコがどこかへ行こうとしていることは、
 見ればわかる。
 わかるけれども、その向かう先がどこなのか、
 何のために移動を開始したのか、そこんところを教えてほしい、と。
 
 そういうとき人は(猫だけど)、「どこへ行きますか。」とは聞かない。
 かならず、「どこへ行くんですか。」と聞くでしょう。
 親しい人に対してなら「どこ行く?」となりますが、
 とにかく「の」(あるいは「ん」)が入る。
 
 たとえば、
  ・そんなにあわてふためいて、どこへ......
  ・きょうは日曜だよ。ランドセル背負ってどこへ......
  ・おっ、きょうはやけにおめかししてるね。どこへ......

 みんな、「どこかへ行く」ということは前提としてわかっている場合です。
 そういうときは、ノダ文を使う、と。

 その前提がない場合、つまり、行くか行かないかそのものも未確定なら、
 その場合は、「行きますか。」や「行く?」になります。

 たとえば、
  ・もし百万円当たったら、どこへ......
  ・今年の夏休みは、どこへ......

 過去の話であっても、同様です。
 たとえば(いきなりですが)、刑事がアリバイ確認をする場面だって、
 最初はまず、ノダ文は使わないだろうと思います。
 「きのうの○時ごろ、どこにいましたか?」

 でも、疑わしい前提がある場合だったら、俄然、ノダ文の出番です。
 「会社にはいませんでしたよね? どこにいたんですか?」



 ただ、日本語学習者は、たとえお出かけモードのあなたを見かけても、
 「わあ、きれいですね。どこへ行きますか?」と聞くかもしれません。
 
 なぜなら、ノダ文を使うためには、形を変えるひと手間が要るからです。
 その前に入れる文を、普通体にする必要があるのです。(←ノダ文だ。)

  行きますか     ⇒ 行くんですか
  行きませんか    ⇒ 行かないんですか
  行きましたか    ⇒ 行ったんですか
  行きませんでしたか ⇒ 行かなかったんですか

 丁寧体であれば、「行き」の部分は活用させなくてもいいですが、
 ノダ文に入れようとすると、「イクイカナイイッタ......」と、
 手間暇かけて活用させなければならないのです。(←ノダ文だ。↓)
 つまり、形の上でも、ノダ文を使いこなすのはたいへんなのぢゃ

 日本語教科書の日本語は不自然だ!などという非難もありますが、
 そんな裏事情もあることを、どうかご理解くださいませ。

 ちなみに、ウリ猫はしばしば「どこいくですか」などと言います。
 (いや、言いませんけれどもさ。)
 何しろウリは日本語があんまり得意じゃありませんのでね、
 ノダ文などは、うまく使いこなせないのである、とご理解ください。


 これでもノダ文のほんの一端なのです
やれやれ、ふー。
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コメント

ウリはいぶかしんだ。
彼女と棲家を分け合うグリコが……由ありげに目の前を横切ったのである。

ノダ文おもしろいです!
これでもほんの一端とのこと、なるほど道理で
「こういうことかな、ああいうことかな」と愚考したものが
微妙にくつがえされていきました。
無意識に使いこなせてよかったと、またまたつぶやいちゃうんだ〜♪

バカボンのパパの登場でレレレのおじさんの決まり文句「お〜でかけで〜すか〜」まで連想してしまいました。
「お出かけですか」の問いかけにはにっこり微笑んで「ちょっとそまで」と返しますが、「何所へいくんですか」と問われたらつい「えぇ、ビールを買いに酒屋さんまで」なんて答えちゃいそうですね。

  • おっチョコ
  • 2015/06/22 10:51

○ なるほど、前提としてわかっている場合にノダ文を使うのですね…。
 「嫌いだ。嫌いなんだ!」で使ってみます。
 ところで、レレレのおじさんと、刑事コジャックの声優が同じ人だって、知ってた?
 (…ったく、どうでもいい情報だけど…)
           <ののちゃんより>

ノダ文にこんなに手間暇がかかっていたとは・・・・・
な〜んにも考えずに使っておりました。
♪大人って大変なんだなんだなんだな〜♪
という少し前に流れていたCMソングが頭をよぎりました。

「どこいくですか」はウリ語です。
ウリさんのかわいらしいミリキ溢れる言葉なので
これでいいのだ!

ノダ文のことを初めて知りました。

確かに「マッサン」のエリーなら、
誰かが出かけるのを見たとき、
「どこに行くのですか?」ではなく。
「どこに行きますか?」と言うと思う。

ノダ文を利用する(使わない)と
台詞に外国人っぽい雰囲気がでますね。
日本語学習者には、難しいんだろうな。 

能登弁なら
「どこに行くがけ?」
になるのかな?????

最近、NHKの朝ドラに はまっています。
たまに、三毛ちゃんが出演します。
かわいいですよ。

  • すーさん
  • 2015/06/23 13:43


◆コメントをありがとうございました。
 このごろ、「学習者のための」というよりは、
 断然、「日本語ネイティブのため」寄りになっている本ブログ、
 母語話者のみなさまに、「あ!」と思っていただけて光栄です。
◇こてちさん
 おみごと! こてちさんに、グッド例文賞、謹呈!
 つぶやいちゃってください。
 ネイティブ最強なのだ。

◇おっチョコさん
 そうそう、「〜んですか?」と聞かれると、
 何の銘柄を何本買うのか、きのう買ったばかりなのになぜ行くのか、
 ついつい、答えなくちゃいけない気になります。

◇kitcatさん
 レレレのおじさんは、見て(聞いて)いないのですが、
 コジャックさんの声はわかります。
 そして両者の印象がだいぶ違うことも。
 kitcatさんてば、どうでもい......おもしろいことをよくご存じで。
 して、何をそんなにお嫌いになるのでしょう?

◇ぽぽろさん
 ウリ語を認知してくださって、ありがとうございます。
 そのCMは存じませんが、学習者って、たいへんなンデス!

◇すーさん
 テレビにうとく、ましてや朝のテレビは見たことないのですが、
 エリーさんの日本語はそんなふうに造形されているのですね。
 なかなかするどい脚本家さんだと思いますわ。
 で、なんですと? 三毛が出てくるんですか?
 それはそれは......今度見てみなければ!

  • ニャンタのおば
  • 2015/06/23 15:09