とります。

☆ロケ現場で拾った日本語【とる】



そんなかっこうでは寝苦しかろう。
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などという心配は、ご無用。




次に見たら、こうなってました。
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何も考えていないって、いいよなあ。
おばはちょっと首をひねりすぎて、
考えすぎて、頭が痛くなりましたよ。

「とる」という単語についてです。

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※ロケ現場で拾った日本語第2弾、
 「とる」についての考察に続きます。(↓)

***

ドラマのロケ現場で、気になった日本語はたくさんありますが、
先週ご紹介した「ばらす」のように、
なるほどな〜、と納得できる表現がほとんどでした。

そんな中で、どうもしっくり来なかったのが、「とります」。

  ・ドライ、とりまーす。つぎ、テスト行きます。
  ・テスト、ります。じゃ、つぎ、本番お願いしまーす。

何しろ撮影現場ですから、初めは「撮ります」だと思いました。
でも、ようすを見ていると、何だかそれではズレている気がします。
第一、「ドライ」というのが何なのか、わからない。

号令一下、いっせいにわらわらと動き出すスタッフさんたち、
とうてい、質問を受けつけてもらえる雰囲気ではありません。
が、ふと見ると、監督さんの周囲だけが、台風の目のように静かです。
お邪魔虫の方言指導おばさんは、監督さんに聞いてみました。

まず、「ドライ」というのは、ドライリハーサルとも言って、
カメラもマイクも入れないで、お芝居の流れを確認するもの。
役者さんを煩わせたくないときは、助監督が代行することもある。
で、それでセリフのタイミングや役者さんの動きがおおよそ決まったら、
カメラ、マイクを入れて、画面でどう見えるかを確認するのが、テスト。
さらにもろもろのチェックを経てOKになったら、いよいよ、本番。

――ということになってるんだそうな。
そして、問題の「とる」というのは、
そのドライやテストを「終える」ことなのだとおっしゃいます。
説明しながら、監督さんは何かをぽいっと捨てるような身ぶりをなさる。



試みにお手もとの国語辞典で「とる」を引いてみてください。
日本語に限らず、基本的な単語ほど語義がいっぱいあるものですが、
「とる」にも、軽く20や30の語義が並んでいるはずです。
そして日本語に特徴的なのは、それぞれに別々の漢字表記まであること。
「取る、撮る、採る、獲る、捕る、摂る、執る、盗る、......」
こういうのを同訓異字といいます。

で、「ドライとります」の「とる」は、つまり、これであるらしい。

  ・絹サヤのスジをとる
  ・エビの背ワタをとる

無理矢理に漢字を当てるとすれば、「除る」ですかね?

語義の展開・発達というのは、つくづく、おもしろい。
「絹サヤをとる(=収穫する)」と、「スジをとる(=除去する)」では
動作主と対象のベクトルを考えると、まったく方向が逆ですもんね。



ところで、監督さんのわきで聞いていた「記録」さんという職掌の方が、
それ、NHKだけですけどね、と、ことばを添えられました。
ほかの局では、「終わります」「以上です」って言ってますよ、と。

ふうん。
ギョーカイ用語にも方言があるんですねー。


下手の考え、休むに似たり。
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(余談)
この記事を書きながら、「粗熱をとる」が近いかな、とも思いました。
必要だったけど今は不要なもの、を除去する、っていう意味で。

粗熱をとる......、
ああ、古傷がうずく。⇒☆猫持ち家庭における粗熱取り問題

さらにそのついでに、少し前のわが家でのできごとを思い出しました。

この夏の暑さで乳酸菌が元気になり過ぎて酸っぱくなってきた糠床に、
卵のカラ(=中和剤のカルシウム)を入れようと思ったときのこと、
見た目に反してこういう細かい作業をいとわぬオット氏に、頼みました。
「カラの内側の白い薄皮、取ってね」と。

しばらくして見ると、おっとっと!
オットットは、ちまちまむいた白い薄皮の方を糠床に入れようとしている!

違う違う、ほしいのはカルシウム!カラの方だから!と止めると、
だって白い皮入れろって言ったじゃないか、と反論する。
いんや、そんなことは言ってません。
いんや、白い皮取って入れろって言った!

......。

あー。
言った。
言いました。
だがしかし、ここは、NHK方言の「取る=除る」が正解!


あなたは、イチゴのヘタを取って食べる人?

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コメント

イチゴのヘタを取って食べるか。

言われてみれば、奥の深い質問ですね。

イチゴを収穫する時は、ヘタも一緒に取ります。
食べる時はヘタは取って、イチゴを食べます。

どっちも取ってる。
けど、ヘタは食べない。
ゴワゴワして硬くて青臭いからね。

  • すーさん
  • 2015/09/14 10:41

出汁をとるというのもあります。
料理初心者に出汁をとらせたところ、鰹節をざるで濾すとき肝心のだし汁を流しに流してしまった。 
日本語学習者をおいこむような「とる」問題ですね。

イチゴのへた、つまんで食べる派です。ヘタは食べません。

答えながらヘタだけを食べる人の姿を思い浮かべてしまいました。

  • おっチョコ
  • 2015/09/14 10:55

はじめまして。
いつも楽しく拝見しています。
この業界方言シリーズ、おもしろいです!
次回も期待しています♪

  • ガウガウ
  • 2015/09/14 14:37

○ 通常の方言に加えて、局ごとに違うギョーカイ用語もあるのですねっ!
 次回、テレビ業界で、(ドラマでも報道でもそうですが、)夕方に行っても「おはようございます」ってあいさつするんです。何ででしょう…?
 ちなみに、スーパーマーケットの従業員も同じ…。
 イチゴのヘタは、”とって”から食べます。
 うりさんの頭の上にある、ボーリングの玉みたいのは。なぁに?
        <ののちゃんより>

おもしろいですね〜。
ニャンタのおばさまだからこそ拾って掘り下げられた言葉たち。
もともとは古くからの舞台用語が後発組の映像業界で使われて、
さらに撮影現場特有の言葉が必要になって育っていったのでしょうね。
「とる」は特有の言葉ですね。全然知りませんでした。
さらに局限定だとは! さらなる細分化に驚きます。
次はなにかな、わくわく〜♪
あ、イチゴはヘタをとっていただきます。

「白い皮をとっていれる」
確かにオットットさんは間違っていないですね。
メモ書きに「白い皮をとって、いれる」と書いてあったら
カルシウム投入されたかな(笑)
日本語は難しいですね〜

あ、私もイチゴのヘタはとりますよ(^^

  • A
  • 2015/09/15 12:36


◆コメントをありがとうございました。
◇すーさんさん
 記事を読んだ知人から「ナスのヘタは食べるゾ!」と言われました。
 私もナスはヘタのあたりがいちばんおいしいと思います。
 でも、イチゴのヘタは、ねえ。
 「ヘタなしイチゴ」とか開発してる人がいそうですな。
 それだと絵にならないから売れないかな。


◇おっチョコさん
 あっはっは。
 カツオブシを「茹でた」んですね。
 フィクションかとも思いますが、ありそうな話です。
 イチゴのヘタだけ食べる人、もしかしたら、いるかも。
 トウモロコシのヒゲがブームになりませんでしたっけ?


◇ガウガウさん
 初めまして。ようこそおいでくださいました。
 コメントをいただけて、うれしいです。
 ギョーカイ用語シリーズ、シリーズになるほど続きますかどうか......
 大した品ぞろえはありませんが、どうぞまたお越しくださいませ。


◇kitcatさん
 あの「おはよう」は、各業界独自の時計に従っているのでしょうね。
 「その日いちばん初めのあいさつ」と考えれば、さして違和感はない。
 その人にとってはお早いんですもんね。
 で、さて、ヘタを取ってから、ええと、ヘタを召し上がる?

 続けてのペットショップ糾弾記事、
 激しく首肯しつつ、拝見しております。
 売る人買う人に当然の責務を負ってもらう、
 それによって、命の売り買いは儲からないもんだと認識してもらう。
 道は遠いかもしれませんが、それが現実的ですね。
 ののちゃんといっしょに、目を光らせていましょう。


◇こてちさん
 舞台は舞台で、またおもしろいことばがあるのでしょうね。
 こてちさんにワクワクされるとドキドキしますが、
 つぎは、うーむ、何があったかな......

 あ、イチゴはヘタをとってヘタをお口へ?
 「バナナは皮をむいて食べる」とか、いろいろからんでみたい。

  • ニャンタのおば
  • 2015/09/15 12:39


◆Aさん、コメントをありがとうございました。
 そうなんですよ、オットット、間違っておりません。(ちっ)
 読点はだいじです。メモのときは気をつけましょう。
 あるいは「白い皮はとって」と「は」にするのもいいですね。
 ことばはむずかしいけど、だからこそたのしい♪

  • ニャンタのおば
  • 2015/09/15 13:00


◆kitcatさんのご質問にお答えしておりませんでした。
 ウリの頭上のボウリングの玉みたいのは何だ、と。
 たまたまLUMI子2号で撮った写真がありましたので、
 次の次の記事でお答えしますね。

  • ニャンタのおば
  • 2015/09/16 09:05