もらいました。

☆ロケで拾った日本語【もらいました。】




もらった。

  P1200150.JPG



おきゅぱいPC。


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ドラマのロケ現場で拾った日本語#4は、
 「もらいました。」です。(↓)

***

撮影現場では、とにかくヒトとモノが交錯していました。
まず、人間が多い。
台本に役名・職名が載っている人だけで、96人。(←数えた)
そして、物が多い。
名前も使い道もわからない機材や大道具や小道具がいっぱい。

そうして、人から人へ、物を受け渡す場面が、たくさんあります。

 重そうな照明器具。
 高そうなカメラ。
 汚したらアウトの、替えのない小道具。
 めちゃくちゃ重そうなガッタンゴーの鉄の台車。
 薮の中にいる音声さんに、虫よけスプレー。
 役者さんに中継する、熱いお茶の乗ったトレー。
 助監督さんが食いっぱぐれてた、食べかけのお弁当。

そのたびに聞こえたのが、これでした。

「はい、もらいました。」

受け手側の人が言うことばです。
愚考するに、意味は、こうです。

――今あなたが私に手渡したものを、私はしかと受け取りました。
  ですから、あなたはもうその手をはなしても大丈夫ですよ。
  私は、落っことしたりしませんから。



こういうとき、日常生活では何と言っているでしょう。
「もう、手、はなしていいよ。」
これじゃないでしょうか。

「もらう」は、所有権が話し手に移動することを意味し、
末尾の「〜た」は、完了のアスペクトを表していますが、
この場合は、あきらかに【所有権の移動が完了した】ことより、
その先の【だから手を放していい】を伝えることに主眼がある感じでした。

それが証拠に、言われた方(=渡し手)は、ためらわずに手をはなし、
きびきび、さっさと、次のしごとにかかるのです。
日常だったら、「だいじょうぶ? はなすよ? いい?」などと
くどくど念を押すところでしょう。

また、日常の会話では、そういうとき、もし相手が目上の人だったら、
「ありがとうございます。もうはなしていいですよ。」
みたいに、待遇の度合いを変えなければならないところですが、
「はい、もらいました。」は、
誰が誰に言うときでもオッケーな感じでした。
すべてコミコミ、ひとまとまりの記号として機能している感じでした。


便利、便利。
だからといって、これを日常生活にも使おうとまでは思いませんが、
一見してギョーカイ用語とわかるようなもの以外にも、
こまかな意味の発展や特化はあるものだなあ、と感心した次第です。


プロっぽい発音では、
「ぅいもらぃぁしたー。」

 猫押し→

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※「ロケ現場で拾った日本語」、まだまだあるのですが、
 もうじき月も変わることですし、この辺で打ち止めにします。
 またどーしてもしゃべりたくなったら書くかもしれませんけれど。
 長々とおつきあいくださいまして、ありがとうございました。

コメント

「ロケ現場で拾った日本語」おもしろく読ませていただきました。
業界により違ったり 同じだったり 現場で都合がいいんだろうな 簡潔で。
限定生きた日本語ですね ウリちゃん。

  • きゃろりん
  • 2015/09/28 07:58


◆きゃろりんさん、コメントをありがとうございました。
 これまでギョーカイ用語というものを白眼視するところもあったのですが、
 ことばが栄えるには、それなりの理由があることを知りました。
 必要な場所で、適切なことばが、まさに「生き」ていました。
 お読みくださって、ありがとうございました。

  • ニャンタのおば
  • 2015/09/29 12:52

○ 確かに、紛失したらそれ以降の撮影がパーになりかねない、重要な物がけっこうありそうだから、電車の運転手の指差し呼称に近い”確認”なのですね。
 部外者から見ると、明らかに”変”でも、必要性から生まれた言語なのでしょうねー。
 先日、猫友さんが犬友さんに、「うちは、2にゃんいて…」て話したら、「2にゃんってなぁに?」って聞かれたんだって。
 犬友さんは、「1ワン、2ワン…」って言わないのですね…。
           <ののちゃんより>


◆kitcatさん、コメントをありがとうございました。
 「確認」の意味ももちろんありますが、「もう放していい」という、
 そういう合図の意味が、どっちかというと強いように思いました。
 素人は、つい念を押したくなる場面なんですけれどね。

 えー、犬飼いさんたちは、なんて数えるんですか?
 クールに、1ぴき、2ひき、でしょうか?

  • ニャンタのおば
  • 2015/10/01 17:59