★日本語文型【(〜て)よし、(〜て)よし。】
おばちゃんが ぶつぶつ いってるですにょ。
さてさて。
オリンピックより頻度の高い東京都知事選がスタートしました。
私は、鳥越俊太郎氏のスピーチが気になってしかたありません。
例の「3つの『よし』」です。
いろいろバリエーションはありますが、
おおよそ、次のような文脈で使われています。
・東京が「住んでよし、働いてよし、環境によし」という3つの「よし」を持つために、私の全力をささげたいと心から思っています。
・住んでよし、働いてよし、環境によしの東京にしたい!
「(〜て)よし、(〜て)よし。」は、
きのうの解説に書きましたように、
1つのもののステキな活用法を2つ以上紹介するときに使う文型です。
ここでの「1つのもの」とは、「東京」です。
つまり、こういうことになります。
・東京は住んでよし。(東京に住む=場所格)
・東京は働いてよし。(東京で働く=場所格)
ここまでは、いい。
問題は、3つめの「よし」です。
きのうの解説に付記した通り、活用法や楽しみ方の例、
あるいは取り合わせの相手などが 名詞で表せる場合、
格助詞の「に」を使って、直接その名詞を放り込むことができます。
・東京は(住んでよし、働いてよし、)環境によし。
変です。
形の上では同じ構文に見えるけれど、変です。
「環境」が「東京」の活用法? 楽しみ方?
次のような例と比べてみれば、はっきりするでしょう。
・東京は(住んでよし、働いてよし、)観光によし。
・東京は(住んでよし、働いてよし、)子育てによし。
これなら、違和感なく、するすると耳に入ってくるはずです。
「よし」の意味も、格助詞「に」の働きも同じだし、
観光や子育てをする「場所」としての「東京」だと、素直に解せます。
鳥越さんは、「東京が環境に優しい。」と言いたいのかもしれません。
あるいはもしかして「東京の環境をよくしたい。」かもしれません。
でも、それでは、「よし」の意味が前の2つと明らかに違ってくるし、
「東京」と「環境」の格関係も、ずれてしまうことになります。
「住んでよし、働いてよし」に続けて並べるのは、無理があります。
この手の違和感は、他言語に置き換えると見えやすくなるもの。
英語訳を探してみたら、こんなのが見つかりました。
"Let's create a new Tokyo where it is good to live and work, and is environmentally friendly!" (The Mainichi)
ちゃんと「よし」の違いを訳し分けています。
"I want to bring about three 'goods' in the sense that (Tokyo) is a good place to live, a good place to work and also good for the environment." (The Asahi Shimbun)
やはり、3つめには違う格を当てています。
*
揚げ足取りをしたいわけではありません。
でも、政治家(になる人)には、ことばを大切にしてほしい。
ことにも、選挙戦中、何度も繰り返すつもりのフレーズならば、
もう少しこまやかな神経を使ってほしいのです。
耳に引っかかる日本語は、その内容まで疑わせます。
しっかり考えて、本気でしゃべっているんだろうか、
ふとした思いつきを連呼しているだけなんじゃないか、
――そんなふうに思ってしまいます。
この記事を書くために、氏の演説の動画を何本か視聴しました。
(あー、ごめんなさい。微妙に嘘つきました。2本しか見てません。2本が限界!)
ことばが滑らかに出て来ない様子に、さらに違和感が募りました。
むろん、立て板に水がいいというのではありません。
でも......
ほんとうに言いたいことがあるのかしらん?
ほんとうに準備と覚悟ができているのかしらん?
準備万端、早くから立候補を表明していた宇都宮さんを
文字通り、押しのける形での立候補です。
野党統一候補を立てることの是非とはべつの問題を感じます。
宇都宮さんの被選挙権と、私の投票権がないがしろにされた、
――そんな苦い味が、舌にザラつきます。
私は誰に入れたらいいの?
猫らよ、教えて。